2017/08/03

室内でのビルベルギア栽培のポイント


南側の窓辺。私のメインの栽培環境です。

 これからビルベルギアの栽培について話しますが、はじめに断っておきたい事があります。私はあくまでも初心者の愛好家として、育てた感想を話しています。厳密な検証の結果に基づいている訳ではありません。私は室内でビルベルギアを育てていますが、ご自身の栽培環境と比べて何かしらの参考になればと思っています。


 基本的な栽培の方法については以前投稿した記事(ビルベルギア入門を参考にしてください。うまく書けていないのでそのうち書き直そうと考えていますが、ほったらかしにしています。



室内栽培の問題点 

 ビルベルギアを育てる上で大事なことはいくつかありますが、最近私は風通しが良いことが最も重要なのではないかと感じています。

 しかし、風が直接的に株の姿や色に影響を与えると考えているわけではありません。株が色付いたり瑞々しく育つには、十分な明るさと沢山水をやる事が必要だと思っています。では風が何故一番重要だとなのでしょうか。その理由は風が葉の温度を下げ、蒸れる事を防ぐからです。風通しが良いと葉が焼けるのを防ぎ、沢山水をあげても腐る事はありません。

 まわりくどく書きましたが、現時点で感じているのは「風通しが良いと、沢山の光と水をあげることができる」ということです。

葉焼け。葉の温度が上がり葉焼けしやすい状態だったと思われる。

サーキュレターで風を送っていたつもりだったが、うまくいってい
なかったのかもしれない。これ以降サーキュレーターを首振り式の
扇風機に変えて見ました。


室内栽培におけるLED補助光の効果


  私の所有しているビルベルギアの少なくとも6割は完全に室内栽培です。南向きの室内栽培では日照時間が長くなるはずの夏至を中心に、南中高度が高くなり室内に日が入りにくくなります。その為夏場は補助光が必須になってきます。

 下の写真を見てください。8315:12分、太陽はもうすぐ真西になります。台風が日本列島の南方に発生しており、少し大気の状態が不安定な曇りの日です。この日の屋外とLED補助光のある室内の明るさを比べてみます。ちなみに、計測機器はアマゾンで買った安物の機器なので、絶対的数値は参考にならないので、あくまでも3カ所の比較としてご覧ください。




写真1

 (写真1)まずこちらは東側の窓辺。マンションの構造上で白い乳白色のプラスティックボードに囲まれています。うちはマンションの5階なので周囲に遮るものは全くありません。


写真2
(写真2)次に南側のベランダからせり出した栽培スペースです。こちらは40パーセントの遮光をしています。因みに遮光シートは白いものを使用します。これは植物の周囲は反射率の高い白いもので囲み、できるだけ明るい環境を作るための工夫です。

写真3
(写真3)最後に室内です。南向きの窓からは自然光、その反対または上部からLEDライトで補助しています。ただ私が使用しているLEDライトは円形に照らしますが、外側に向かって光の強度が弱まります。一つでは全体を均一に照らすことは難しいので、わたしは9灯使用しています。しかし、9灯使用しても均一に照らすことは難しくムラはあります。仮にLEDの光のムラを10段階に分けて、一番明るい場所を10とすると、写真の計測場所は3程度の明るさです。




 比較すると、曇りの状況下では室内の補助光を使った方が明るいということになります。これは補助光を用いた室内環境では、日照条件の悪い曇りの日でも安定的に日照を得ることができていると予想されます。少なく見積もっても 植物用のLEDを使うことによって無駄な徒長や酷い退色を防ぐことはできます。



参考までに室内栽培の株をいくつか紹介します。

Hohenbergia utriculosa
ホヘンベルギア ウトリキュローサ
Hohenbergia Leme #2203


Hohenbergia sp. Sandra's Mountain
ホヘンベルギア サンドラズマウンテン

Hohenbergia edmundoi Clonotype Leme
ホヘンベルギア エドムンドイ


Billbergia Sanderiana
ビルベルギア サンデリアナ

Billberigia Kahakai
ビルベルギア カハカイ

Billbergia Kawana's Joy
ビルベルギア カワナズ ジョイ


Billbergia Domingos Martins ex kunzo nishihata


Billbergia Kolan Express
ビルベルギア コラン エクスプレス

Billbergia Kawana's Flashy
ビルベルギア カワナズ フラッシー





2017/04/15

日本ブロメリア協会 春のブロメリアフェスタ 2017




 日本ブロメリア協会主催の春のブロメリアフェスタに行って来ました。あまりにも買い物に集中しすぎた為に会場の写真は撮ることができませんでした。

 ビルベルギアを育てだして約一年。他のブロメリアにも興味が出てきました。ティランジアをはじめラシナエアやナヴィアやフリーセアなど挙げればキリがありません。今回はビルベルギアとホヘンベルギア以外に何か一つ購入しようと思っていました。

 本当に楽しみにしていたので、案内のハガキが到着する直前に待ちきれずに、事務局の清水さんに電話でイベントの予定を尋ねたほどです。また、前日の夜は寝つきが悪く、会報のバックナンバーを見ながら、明日は一体どんな株が出品されるだろうと、何度もページをめくっていました。

 待ちに待った当日、開始の15分前に到着してみると、会場には既に沢山の会員の方が、お目当てのブロメリアを物色している最中です。出遅れたという焦りと、久しぶりに目にする沢山のブロメリアを前に、一気に緊張状態へ、心拍数が上がり、口の中が乾きます。しかも、年に数回しか会うことのできない、同じブロメリア好きの人達との話もしたいのです。会場を歩き回ります。サイレントオークションには何が出品されているだろう?T'S TROPICALSは?スピシーズナーセリーは?目が回るような思いで、欲しい株を探しました。あっという間に開始の時間になりました。私はサイレントオークションに参加するために、通常の販売ではあまり軍資金を使わないように、一つだけティランジアを買いました。そして、オークションに出品された沢山の株の中から、目星を付けると、目当ての株に入札しました。結局は、興奮状態のまま、目当ての株全てを競り落とすという結果に。本当に良い株を沢山持ち帰る事ができました。以下で今回購入することができた株を紹介します。


Tillandsia sp. NOVAYellowSpike/Yellow FlowerCollected in Ecuador 1997T'S TROPICALSType:Ecuador:AZUAY:Ona, 2,700m  saxicola,26 june 1997H.Takizawa & D.Cathcart TH970626(Holotyp:SEL)





 日本ブロメリア協会の会報には沢山のブロメリアが紹介されているのですが、最近はRacinaeaVrieseaでタンク型っぽい形をしたものがとても気になっていました。そして、この株の自生地での姿が、最近私が気になっているブロメリアの姿と似ていたので購入。しかも、会長とデニス氏が1997年にエクアドルで採集した株です。自生地の標高の高いので暑さには弱いそうですが、夏場に温室管理でなければいけるとのこと。涼しい風通りのよい場所を探して育てたいと思います。素焼きの鉢に軽石とバークチップで育ててみます。


T.chiapensis x T.xerographica
M.A.Dimmitt
1996WBC Orando Florida



 私はこの株が今回のサイレントオークションに出品されているのを見つけると、是非とも落札しなければという思いになりました。

 こちらの株は1996年開催のブロメリア国際会議のオークションに出品された、マーク・ディミット博士による交配種です。滝沢会長は、この株に強い衝撃を受け、ティランジアの交配に力を入れるようになったという象徴的な株です。その時の様子が会報で紹介されています。またその記事では交配種を創るにあたり、個体名を明確に扱っていく事の重要性が書かれているのです。私の目標はビルベルギアの素晴らしい交配種を創るという事です。私も高い目標を持って交配に取り組むという事に何かしらの示唆を与えるものであると感じました。是非とも落札しなければと思った理由には、そんな自分なりの物語を見つけたからです。



Hohenbeegia leopoldo-horstii “Dark Clone”Selected from wild collection


  滝沢会長によるとブラジルはバーイア州チャパダ・ディアマンティナで採取された株とのこと。野生種です。



Hohenbeegia Leopoldo-Horstii  Black Type MCX1 
Selected clone from Self Pollinated seedlings of Hohenbergia leopoldo-horstii Dark Type


 説明にあるように“MCX2”というコンパクトタイプがあるようで、そちらも育ててみたくなります。


Hohenbergia pennae  (Palmeiras,Bahia) “Selected Good Clone

pennae Wally Berg's super select(右)との比較


 枯れかかっている親株が小さいので、コンパクトなペンナエかと思いましたが、写真の倍ぐらいにはなるようです。葉は硬くしっかりして、色はシルバーです。隣の親株の葉は緑なので、大きくなるに従って葉は緑になるかもしれません。

 また鉢ごと購入なので、会長の使っている植え込み材のままです。この写真を見た方にアクアリウムの濾過フィルターに入れて使うセラミックの濾材だと教えて頂きました。軽石に比べ一粒一粒がとずっしりと重たいです。セラミックの濾材を使っている理由は聞けませんでしたが、植え込み材に付いてはそれ程気にしなくてよいとのこと。


Tillandosia Mexican Selected Clone 







 こちらはサイレントオークションのブースにあった大きなクランプを、突然会長が突然株分けをはじめ、一株ずつ購入できることに。目の前で会長の株分けを見ることができると興味津々で眺めながら、一株購入することに。家に帰り始めてコルク仕立てにしました。実際に自分でコルクにつけて見るととても面白く、少しずつ小さいティランジアも集めようと思いました。



Billbergia Domingos Martins 
originally from Don Beadle in 1996 




 縁があって、数ヶ月前に譲っていいただける事になったドミンゴス・マルティンスをフェスタの日に受け取りました。僕がブロメリアを育てるきっかけになった株と同じものです。この株が自然から採取された事自体奇跡的なことのように感じます。ウィットマンからビードルに渡り、現在ある数々のビルベルギアに豊かな表現型を与えた株です。


  さて、この株を使って色々とやりたい事がありますが、一番重要なことは、滝沢会長がやってきたように、このドミンゴス・マルティンスを維持し守っていくことです。その他にもやっぱり交配種の親として、このドミンゴス・マルティンスを使いたい。また、混乱の原因でもある自家受粉の実生を自分でも成功させ、どんな株になるのか見てみたい。そしていつの日か余剰株ができたとしたら、日本ブロメリア協会のサイレントオークションに出品することが恩返しになるのではと考えています。ひとまずは健康で立派な株に育て上げ開花させたいと思います。

2017/02/06

リサ・ビンザントとビルベルギア ドミンゴス・マルティンス (Lisa Vinzant and Billbergia vittata Domingos Martins)

Lisa Vinzant 所有のDomingos Martins 2007年前後の写真 提供 Lisa
Lisa Vinzant 所有のDomingos Martins 2007年前後の写真 提供 Lisa

 今回は自分の持っているドミンゴス・マルティンスの由来をハッキリさせるべく、リサ・ビンザントに話を伺いました。なぜリサに話を聞いたかというと、私の購入先の方が仕入れたのはリサからだと見当をつけたからです(後日、私の購入先に問い合わせたところ、ネームプレートに間違いがなければアメリカ本土だと回答をいただきました。リサからも仕入れているということですが、私の株は違ったようです)

 ビルベルギアを好きな人にとっては、リサ・ビンザント(Lisa Vinzant)というとハワイの育種家で、ビルベルギアダースベイダーを代表とする沢山の交配種を生み出した事で有名です。しかも、その他にも大変美しくクオリティーの高い交配種を生み出しています。そして、その交配の親にはドミンゴス・マルティンスが使われています。私は以前からそのリサが親株に使ったドミンゴス・マルティンスはいったいどこからやって来たのか興味がありました。

 余談ですが、その他にビルベルギアの交配種の育種家で有名なのはJim Irvin Bob Spivey です。また現在はオーストラリアにとても美しいビルベルギアを生み出す育種家が多数います。オーストラリアのビルベルギアについては現在進行形でしかも登録されていない株が沢山存在します。そして、やはり優秀な交配種の系統にはドミンゴス・マルティンスが入っています。もちろんその全ての始まりはドン・ビードルです。


ドミンゴス・マルティンスとの出会い

1996年当時のドン・ビードルの展示写真

1996年当時のドン・ビードルの展示写真

リサの手に入れたドミンゴス・マルティンスが初めての開花した様子


 1996年にフロリダのオーランドで行われた国際ブロメリア会議(The World Bromeliad Conference)でドン・ビードルはドミンゴス・マルティンスを売っていました。リサはそこで初めてドミンゴス・マルティンスを見ました。ドン・ビードルはそこで音楽を流しながら非常に美しい写真を使ったスライドでプレゼンテーションを行ったそうです。それから程なくハワイブロメリア協会会議(Hawaii Bromeliad Society meeting)にもドン・ビードルはやってきます。正確には覚えていないそうですが、彼女はそのどちらかでドミンゴス・マルティンスを手に入れたそうです。

ドミンゴス・マルティンスの実生について

 ドン・ビードルや滝沢会長も話すように、ドミンゴス・マルティンスは成長が遅く増えにくい品種です。リサがドンから聞いた話によると、売るための子株が増えるまでに8年かかったそうです。そして、リサもまた同じこと話します。
 ドミンゴス・マルティンスは自家受粉をしにくいようですが、リサは自家受粉に成功します。はじめはこれで、成長が遅く増えにくいドミンゴス・マルティンスのような美しい株を、効率良く増やすことができると思ったそうですが、実際に採れた種から育ててみるとオリジナルのドミンゴス・マルティンスのような深い色の美しい株が育つことはなかったそうです。

 この自家受粉で取れた種から増えたドミンゴス・マルティンスは親とは違う株になります。根元から子株が出て増殖したもののみが、親と同一の株になります。交配の話は少し面倒ですが、例えばABの子供は全て違う種類になります。要するにABの交配から100株の子供が生まれたとしたら、それは全て同一ではなく100種類の違った株ということです。もちろん親とも違うわけです。通常はその中から特徴的な株を選別して良い株だけ名前をつけるようです。このようなことから、自家受粉で実生された株はドミンゴス・マルティンスと呼ぶことはできません。
 しかし、リサはこれらの自家受粉の株ひとつひとつに名前をつけることはなく、それらの株は全て「ドミンゴス・マルティンスF2」と呼んでいます(ただこのあたりは私は詳しいことはわからないのですが、生物学的には反対する人もいるようです。交配種であればF2と呼んでも良いそうですが、自然から採取されたドミンゴス・マルティンスのような品種の実生はF2とは言わなという意見もあります)。リサの考えでは、「ドミンゴス・マルティンスF2」もひとつひとつ名前を与えることは可能かもしれないけれど、それは単に混乱を招くだけで名前をつけることに価値があるとは思えないということです。こう言った理由で、自家受粉で実生されたドミンゴス・マルティンスの株は全て一まとめに「ドミンゴス・マルティンスF2」と呼んでいるそうです。


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 先にも書いたように、リサは実生からはオリジナルを超えるような美しい株を得ることはできなかったと言います。このことから彼女は交配の親にはドン・ビードルのオリジナルクローンだけを使いました。

リサはドミンゴス・マルティンスについてこのように話しました。

I agree it is one of the best Billbergias, both for breeding and as a species.  I was very excited the first time I saw it.  


 今回は私のドミンゴス・マルティンスの由来を知ることはできませんでしたが、幸運なことにリサ・ビンザント本人とメールのやり取りでお話を伺うことができました。恥ずかしながら白状いたしますが、私は英語ができません(苦手というレベルは超えています)。インターネットの翻訳サイトを使って注意深く翻訳しながらやり取りをしました。おそらくちぐはぐなで訳のわからないメールを書いたと思いますが、気さくに返事をいただき、いくつかの写真まで送っていただきました。私はリサが所有するドミンゴス・マルティンスの現在の写真を見せてほしいと頼んだのですが、現在は見た目がよくないので見せたくないとのことでした。その代わりに10年ほど前の別の写真を送ってくれました。それがはじめの2枚になります。またブログでシェアすることも了承していただきとても感謝しています。





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